確定給付企業年金 | 確定拠出年金 | |
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特徴 | 将来の給付額を確定 | 拠出額(掛金)を確定 |
運用の流れ |
企業が運用
将来の給付額を確定 ↓ 年金資産を一括して運用・管理 ↓ 確定した額が加入者に支払われる |
加入者が運用
拠出額(掛金)を確定 ↓ 加入者ごとに資産を運用・管理 ↓ 運用実績に応じた額が支払われる |
しくみ | 将来の給付額をあらかじめ決めておき、 その給付額に必要な掛金を、予定利率や平均余命などにより算出して拠出する制度です。 将来の給付額は、企業が保証します。 |
拠出額(掛金)をあらかじめ決めておき、将来の給付額は拠出額とその運用実績によって決まります。 将来の給付額は運用実績によって変動し、確定しません。 |
運用 | 年金資産の運用は、企業が一括して、生命保険会社や信託銀行に委託して行います。 将来の給付額を企業が保証しているため、企業が運用リスクを負います。 |
年金資産の運用は、運営管理機関が提示した金融商品の中から、加入者自身が選択して行います。 運用リスクは加入者が負います。 |
年金資産 の把握 |
個人別の残高は把握されません。 | 個人別の年金口座で年金資産を管理し、残高は把握されます。 |
離転職時 の取扱 |
確定給付企業年金から転職先の確定拠出年金に資産(脱退一時金相当額)を移換できます。 | 離転職時に年金資産の持ち運び(ポータビリティー)ができます。 |
確定給付企業年金と確定拠出年金
企業年金制度の税制上の扱い
厚生年金基金制度、確定給付企業年金制度、確定拠出年金制度へ拠出する法人負担の掛金は法人税法上損金されます。
また、加入する従業員が掛金を拠出する場合も、その負担する掛金は生命保険料控除として所得控除される。
これらの制度については、国民の老後生活の安定のために、公的年金を補完する制度として、企業年金の健全な普及を図るという理由から、根拠法令の規制に適合するものは税制上の恩典を与えられている。
1.掛金の取扱い
法人掛金 | 従業員掛金 | |
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厚生年金基金 | 全額損金算入 | 社会保険料控除 |
確定給付企業年金 | 全額損金算入 | 生命保険料控除(1) |
企業型確定拠出年金 | 全額損金算入(2) | - |
- 年間40,000円が限度。ただし契約日が平成23年12月31日以前の契約に係るものについては、年間50,000円が限度。
- 他の企業年金がある場合は月額27,500円、ない場合は月額55,000円が拠出上限。
2.積立金の取扱い
厚生年金基金の積立金:
老齢厚生年金(代行部分)に相当する額の3.23倍を超える部分に対してのみ1.173%の特別法人税が毎事業年度課税される。
積立金に対して毎年1.173%の特別法人税が課税される。
なお、2017年3月31日までの間は特別法人税の課税はない。
※特別法人税とは掛金相当額を従業員の所得とみなし、退職時までの期間、課税が繰り延べられることに対する延滞税相当額
3.給付金の取扱い
(1)老齢給付金
(年金)
雑所得として課税される。なお、確定給付企業年金で従業員拠出がある場合には、従業員拠出分を控除した後に雑所得として課税される。
厚生年金基金、確定給付企業年金、企業型確定拠出年金からの年金給付は、公的年金等控除の対象となる。
(一時金)
退職に起因する場合は退職所得、それ以外の場合は一時所得として課税される。なお、確定給付企業年金で従業員拠出がある場合には、従業員拠出分を控除した後に退職所得または一時所得として課税される。
(2)障害給付金
年金・一時金ともに非課税扱い。
(3)遺族給付金
厚生年金基金の場合は、年金、一時金ともに非課税扱いとなる。
確定給付企業年金、企業型確定拠出年金の場合は、年金、一時金ともに相続税の課税対象となる。
退職時のルール
従業員の退職時に、よくあるトラブルが、「退職」か「解雇」かというものです。
退職と解雇は、「辞める」という点では同じですが、解雇は会社から一方的に労働契約の解消を意思表示することです。退職とは、「解雇以外で労働契約を解消すること」全般を指します。
①死亡による退職
従業員が死亡した場合、自動的に退職事由となります。
②契約期間の満了による退職
有期雇用契約を結んだ契約社員が、その契約期間を満了した場合です。
③自己都合による退職
従業員からの申し出によって、退職する場合です。会社からの退職勧奨に合意した場合も含まれます。
④定年による退職
会社が決めた一定の年齢に達したときに退職する場合です。
⑤休職期間が満了し、復職できないときの退職
業務外の原因によるケガや病気などで休職している場合、規定の休職期間が終わっても復職できない場合などです。
⑥欠勤が続いたときの退職
会社で定めた欠勤期間を超えた場合です。
無断欠勤を含めた欠勤が続いたとき、一定の猶予期間(欠勤期間)の経過後に退職することについては妥当な措置とされています。
なお、猶予期間は30~60日が一般的です。
⑦取締役に就任することによる退職
取締役に就任すると、従業員としての身分を失います。
会社とは雇用契約を解消し、改めて委任契約を結ぶことになります。
これら退職事由の効力をもたせるためには、必ず就業規則に明記しておく必要があります。
決めておきたい「退職時の3つのルール」
退職時のトラブルを最小限に抑えるために、まずは次の3つのルールを決めて、就業規則に規定しておきましょう。
1.退職を申し出る期限
退職を申し出た日から退職日までの期間が短すぎると、十分な引き継ぎができず、会社の業務に支障が出てしまうことがあります。
民法では、退職希望日の2週間前までに退職の申し出をすればよいことになっていますが、事務手続きや引き継ぎにかかる時間を考えて会社で退職を申し出る期限を決めることもできます。
2.退職日
社会保険料の計算などでも混乱が生じます。
一般的に、退職日は次のように解釈されます。
(退職事由とその退職日)
(1)死亡による退職…死亡した日
(2)契約期間の満了による退職…契約期間満了日
(3)自己都合による退職…本人が明示した退職希望日
(4)定年による退職…定年に達した日。
60歳が定年なら、例えば「60歳の誕生日」
(5)休職期間が満了し、復職できないときの退職…規定の期限が経過した日(休職期間の最終日)
(6)欠勤が続いたときの退職…規定の猶予期間が経過した日。
猶予期間30日の場合は、「30日目」
(7)取締役に就任することによる退職…取締役就任日の前日
3.退職届の提出
自己都合による退職では、必ず「従業員からの退職届の提出をもって退職が成立する」と規定しておきましょう。
自己都合退職には、会社からの退職勧奨に応じて従業員が退職した場合も含まれます。このようなケースでは、退職後に元従業員との間で「退職」か「解雇」かといったトラブルが起こる場合もあります。退職の意思を表明した「退職届」が残っていれば、このトラブルは避けることができます。退職届は、本人に手書きしてもらうことが大切です。会社が用意した退職届のひな形に、退職日、氏名、提出日を書き込んでもらってもよいでしょう。
退職時の「有給休暇の買取」
退職日以降の消滅してしまう年休なので、買い上げることが「できる」ということです。ただし、退職時に有給休暇の申請があった場合、法的には有給休暇は前日までに申請すればよいので、退職時にまとめて取得を申請されたとき、多くの場合に認めざるを得ません。
この場合に、有給休暇の残日数を「買取」ということが選択肢として考えられます。原則として有給休暇の買取は禁止されていますが、退職時の残日数の買取は問題ありません。
買取の金額については、必ずしも1日分でなければならないわけではなく、買取金額はお互いの同意があればいくらでもかまいません。
取得申請をされた場合に、買取を打診して、残日数分の買取金額を合意のうえ決定します。退職日を前倒しにすることにより、会社負担の社会保険料のコストを抑えることになる場合もありますし、買取金額を低く合意すれば支出金額も抑えることもできます。