税務調査(国税通則法など)

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質問応答記録書への署名・押印

税務調査の現場では、特に重加算税の賦課や、法人経費に個人的支出を紛れ込ませていたなど、本人の「自供」を証拠として取りたい場合などに調査官が求めてくるのが「質問応答記録書」です。

調査官が書面を求めてくるというのは、「書面がなければ課税できない」ということです。

この書面への署名・捺印は断ることができます。

「回答者が署名押印を拒否した場合は、どのようにすればよいのか」
(答)
読み上げ・提示の後、回答者から回答内容に誤りがないことを
確認した上で、その旨を証するため、末尾に「回答者」と
表記した右横のスペースに回答者の署名押印を求めることとなるが、
署名押印は回答者の任意で行うべきものであり、これを
強要していると受け止められないよう留意する。
したがって、回答者が署名押印を拒否した場合には、
署名押印欄を予定していた箇所を空欄のまま置いておき、
奥書で、回答者が署名押印を拒否した旨(本人が拒否理由を
述べる場合にはそれも附記する)を記載し、また、回答者が
署名押印を拒否したものの、記載内容に誤りがないことを
認めた場合にはその旨を記載する。

(「質問応答記録書作成の手引について(情報)」
国税庁 課税総括課情報 第3号 平成25年6月26日
この35ページ・問15)


法定書類でないものを税務署が提出依頼する行為は「行政指導」に該当します。

行政手続法第32条第2項
行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。

つまり、「調査官は、納税者が質問応答記録書の提出を断ったからといって、不利益な取扱いをしてはならない。」となります。



税務調査で調査手続きが守られなかった場合

平成25年1月以降、国税通則法の改正により税務調査の手続きは細かく定められましたが、現実の税務調査では、調査官はこれらの細かい調査手続きを守っていないことが多い。

税務調査で調査手続きが守られなかった場合の違法性は?

もちろん、国税通則法第74条の2以降に規程される調査手続きが守られなかった場合は、「国税通則法」違反ということになります。

調査手続きの多くは、
法令解釈通達
「国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達の制定について」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/zeimuchosa/120912/index.htm

事務運営指針
「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/sonota/120912/


に定められているわけです。これらに違反していた場合は?

法令解釈通達と事務運営指針は、ともに「通達」に該当します。
「通達」とは、「上級行政庁が下級行政庁に対し,細目的な職務事項や法律の解釈・判断の具体的指針を示し,行政上の処理の統一を期するために文書をもって発する指示」(大辞林)であり、税務行政においては、税務署職員が「守らなければならない」命令・規則です。

法令解釈通達や事務運営指針に違反するということは、調査官が通達=国税の規則・命令に違反しているということです。

公務員は法律だけではなく、定められた命令や規則を守らなければなりません。

国家公務員法105条(職員の職務の範囲)
職員は、職員としては、法律、命令、規則又は指令による職務を担当する以外の義務を負わない。

調査官にとってみれば、法令解釈通達や事務運営指針などの「通達」が命令・規則に該当します。
法令解釈通達や事務運営指針に定められた調査手続きに違反するというのは、「国家公務員法」違反となります。

国家公務員法98条(法令及び上司の命令に従う義務並びに争議行為等の禁止)
職員は、その職務を遂行するについて、法令に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。

違反した場合は、懲戒の対象になります。

国家公務員法82条(懲戒の場合)
職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し
懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
二  職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合

調査手続きについては、通則法はもちろんのこと、法令解釈通達と事務運営指針を知っておく必要があります。

税務調査での「修正申告」と「更正・決定」の違い

税務調査で誤りがあった場合、「修正申告」と「更正・決定」(税務署による処分)の違いは?

税務調査で誤りがあった場合は、更正・決定すると規定されており、更正・決定の説明をする際に、調査官が「修正申告を提出してもいいですよ」とすすめることができるとされています。

 国税通則法第74条の11(調査の終了の際の手続)
2 国税に関する調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、当該職員は、当該納税義務者に対し、その調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた額及びその理由を含む。)を説明するものとする。

3 前項の規定による説明をする場合において、当該職員は、当該納税義務者に対し修正申告又は期限後申告を勧奨することができる。この場合において、当該調査の結果に関し当該納税義務者が納税申告書を提出した場合には不服申立てをすることはできないが更正の請求をすることはできる旨を説明するとともに、その旨を記載した書面を交付しなければならない。

更正・決定をされたからといって、税務署から不利益な取り扱いをされることなどありません。また、本税、加算税、延滞税ともに金銭的な負担は同じです。
 
 修正申告と更正・決定の違いは、

○修正申告:不服申立てをすることができない
○更正・決定:不服申立てをすることができる

ということ。

修正申告は納税者がみずから提出するもの(国税通則法第19条)ですから、修正申告の内容に納得がいかなくても、不服申立てをすることができません。
更正・決定は税務署による処分(国税通則法第24条)ですから、その内容に納得がいかなければ場合、不服申立てをすることができます。

国税通則法第75条(国税に関する処分についての不服申立て)
国税に関する法律に基づく処分で次の各号に掲げるものに不服がある者は、当該各号に掲げる不服申立てをすることができる。

 

調査官から、「修正申告=有利」「更正=不利」のような提案を受けたとするなら、それは修正申告の勧奨ではなく強要、脅しということになり質問検査権を逸脱した行為ということになります。

安易に修正申告を提出するのではなく、税務調査における否認指摘に納得できない場合など、更正を選択することも検討しないといけません。

 

調査官が更正・決定ではなく、修正申告で税務調査を終わらせたい理由は?

調査官が更正・決定ではなく、修正申告で税務調査を終わらせたいのはおおよそ次のような理由によるものです。
①税務署内の手続きが面倒
修正申告を勧奨すれば、基本的に担当統括官の決裁だけで税務署内の手続きは終了します。更正となると手続き決裁が面倒で、時間も労力も要します。
②附記すべき理由があいまい
税務調査において調査官が否認指摘をしても、その根拠が曖昧であることが多くあります。税務調査の結末が修正申告であれば、その根拠がいくら曖昧でも、「納税者が納得して提出するもの」である以上、問題にはなりません。更正となると、否認根拠を法令で明確にしなければなりませんから、附記すべき否認根拠を挙げるが面倒で難しいのです。
③不服申立てが前提となっている
更正をすると、かなり高い割合で異議申立てが行われます。そうなると、再調査(実質審理)を行わなければなりません。税務署からすると税務調査の二度手間になるのです。

修正申告と更正・決定の違いは、法的理解はもちろんのこと、調査官の内情も知っておくことが重要です。
「更正したくない」という調査官の本音を知っておけば、納得できない調査官の提案に対して、安易に修正申告してしまうこともなくなります。また、税務調査の交渉上、「修正申告に応じるから、この部分は何とかしてよ」という主張も通るのです。


「現金売上」の計上もれと重加算税

税務調査において、「現金売上」の計上もれの指摘をされ、重加算税とも指摘を受けたときどうするか?

例えば、
○領収書の控えの「一部」に売上計上もれがあった
○窓口での入金帳などには記載があるが、その「一部」を総勘定元帳に記載していなかった
などのケースです。

この場合、重加算税との指摘を受けることがあります。

重加算税を定めた国通法68条に規定する「隠ぺい」、「仮装」という行為は「故意に」行なわれることが前提です。これはどの裁決などでも示されている考え方ですので(国税不服審判所採決 平成9年12月9日、平成14年4月25日、平成17年1月11日など)、調査官が「故意でなくとも重加算税はかかる」とすれば、まったくの誤りとなります。

調査官に現金売上の計上もれを指摘されるということは、これを記載したなんらかの書類が残っているからです。当然、ここには適正に計上されている他の売上の記載もあります。売上を脱漏しようという人が他の売上も記載されている領収書、入金帳から一部のみを除外するでしょうか? 仮に売上を除外しようと考えるなら、領収書を別に切る、入金帳には記載しないなどの行動をとるでしょう。そのような行為が無いのであれば、その現金売上の計上もれは「事務処理上のミス」であり、「隠ぺい」でも「仮装」でもないのです。
このように「なんらかの書類がある」ということは「重加算税ではない」ということなのです。


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