公益・一般法人、社会福祉法人、宗教法人、医療法人

ホーム 税務・会計解説 公益・一般法人、社会福祉法人、宗教法人、医療法人

公益法人等の収益事業に属する固定資産の譲渡

公益法人等の収益事業には、その性質上その事業に付随して行われる行為を含む(法令5①)とされています。
「その性質上その事業に附随して行われる行為」とは、例えば次に掲げる行為のように、通常その収益事業に係る事業活動の一環として、又はこれに関連して行われる行為をいうと規定されます。(法基通15-1-6
(1)
 出版業を行う公益法人等が行うその出版に係る業務に関係する講演会の開催又は当該業務に係る出版物に掲載する広告の引受け
(2) 技芸教授業を行う公益法人等が行うその技芸の教授に係る教科書その他これに類する教材の販売及びバザーの開催
(注) 教科書その他これに類する教材以外の出版物その他の物品の販売に係る収益事業の判定については、法基通15110に定めるところによる。
(3) 旅館業又は料理店業を行う公益法人等がその旅館等において行う会議等のための席貸し
(4) 興行業を行う公益法人等が放送会社に対しその興行に係る催し物の放送をすることを許諾する行為
(5) 公益法人等が収益事業から生じた所得を預金、有価証券等に運用する行為
(6) 公益法人等が収益事業に属する固定資産等を処分する行為

公益法人等が収益事業に属する固定資産を譲渡など処分する行為は、上記(6)のとおり、その性質上その事業に付随して行われる行為として収益事業に含まれます。

なお、公益法人等が収益事業に属する固定資産につき譲渡等をした場合におけるその処分をしたことによる損益は、原則として収益事業に係る損益となるのであるが、次に掲げる損益については、これを収益事業に係る損益に含めないことができるとしています。(法基通15210) 
(1) 相当期間にわたり固定資産として保有していた土地等、建物又は構築物につき譲渡等の処分をした場合における損益《不動産販売業の範囲》
(2) (1)のほか、収益事業の全部又は一部を廃止してその廃止に係る事業に属する固定資産につき譲渡、除却その他の処分をした場合におけるその処分をしたことによる損益

※(1)相当期間とは一般におおむね10年以上保有していた資産と解されています。

※法基通15-2-10は「できる」規定ですので、収益事業に属する固定資産につき譲渡損等が生じた場合は、法基通15-1-6によることもできます。


法人税法上の収益事業で使用するための固定資産の寄贈を受けた場合

公益法人等に対する法人税は、収益事業から生じた所得に対して課税されます(収益事業課税)。収益事業とは、法人税関係法令で規定された34業種の事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいいます。
公益法人等が金銭その他の資産の寄付を受ける行為は、法人税法上の収益事業として規定された事業にも該当しませんので、法人税の計算上益金の額には算入されず法人税は課税されません。

法人に対し譲渡所得の基因となる資産の遺贈が行われた場合

法人に対し譲渡所得の基因となる資産の遺贈が行われた場合

公益法人等が行う育児サービス事業に係る収益事業の判定

一定の水準を満たすものとして地方公共団体の証明を受けた認可外保育施設において公益法人等が行う育児サービス事業に係る収益事業の判定

【照会要旨】

児童福祉法の規定による都道府県知事の認可を受けて設置された、いわゆる認可保育所において公益法人等が行う育児サービス事業(以下「認可保育事業」といいます。)は、保育に必要な施設を有し、保育に関する専門性を有する職員が養護及び教育を一体的に行う事業であることから、法人税法施行令第5条に規定する収益事業として同条各号に特掲されている34事業のいずれにも該当しないものとして取り扱われています。
  ところで、この都道府県の認可を受けてはいないものの、認可保育所と同様の目的により設置されるいわゆる認可外保育施設のうち、一定の質を確保し児童の安全を図る目的で定められた監督基準(以下「監督基準」といいます。)を満たしている認可外保育施設については、都道府県知事からその旨の証明書が交付されています(この証明書を受けている施設を「証明施設」、この証明施設において公益法人等が行う育児サービス事業を「証明施設が行う認可外保育事業」といいます。)。
  この証明施設が行う認可外保育事業についても、認可保育事業と同様に、収益事業に該当しないものとして取り扱って差し支えありませんか。

【回答要旨】

その認可外保育施設が証明施設であり、監督基準に従って運営されている場合には、照会者の見解どおりで差し支えありません。

(理由)

認可保育所において満たすことを求められる児童福祉施設最低基準(以下「最低基準」といいます。)は、児童の身体的、精神的及び社会的な発達のために必要な生活水準を確保することを目的としているのに対して、証明施設において満たすことが求められる監督基準は、一定の質を確保し、児童の安全を図ることを目的としていますので、その目的は完全に一致しているとはいえません。
  ただし、それぞれの基準における検討項目は、証明施設に対する監督基準が認可保育所に対する最低基準に比べて緩和されている項目があるものの、項目としては大部分が共通しているところであり、特に、「保育内容」として規定されている児童の処遇に係る基準の項目については、最低基準により定められた保育内容である保育所保育指針基準に準じています。
  また、「職員」による保育及び「設備」の利用が適切に行われているかどうかなどの実態については、「保育所保育指針を踏まえた適切な保育が行われているか。」という監督基準の「保育内容」の項目に基づき確認されており、これらの項目をすべて満たす証明施設においては保育所保育指針を踏まえた保育が行われ、育児サービスが行われているものと言えます。
  これらのことからすれば、証明施設が行う認可外保育事業は、認可保育事業と同一の育児サービス事業であるとまではいえないものの、一定の水準が確保された認可保育事業に類する育児サービス事業であると認められます。
  したがって、この証明施設が行う認可外保育事業は、認可保育事業と同様に、収益事業に該当しないこととなります。
  ただし、証明施設が行う認可外保育事業であっても、その実態において監督基準に従って運営されていなければ、少なくとも認可保育事業に類する育児サービス事業を行っているとは認められませんので、その場合には、どのような育児サービス事業が行われているかなど、その事業実態に応じて、収益事業に該当するかどうかを個別に判断することとなります。

【関係法令通達】

法人税法第2条第13号
  法人税法施行令第5条
  児童福祉法第35条第4項、第39条、第45条、第59条の2

消費税の非課税取引 社会福祉事業等によるサービスの提供

社会福祉法に規定する第一種社会福祉事業、第二種社会福祉事業、更生保護事業法に規定する更生保護事業などの社会福祉事業等によるサービスの提供

 

 

無料低額な診療を実施する病院事業を行う法人に係る医療保健業の非課税措置

法人税法の別表第2に掲げる公益法人等のうち、無料低額な診療を実施する病院事業を行う法人で、一定の要件を満たしたものについては、法人税法施行規則第6条第4号及び第7号(第7号は非営利型の一般社団法人又は一般財団法人に限る。)において、当該基準を満たしていることについての厚生労働大臣の証明を受けることにより、その法人が行う医療保健業は収益事業の範囲から除外され法人税が課税されないこととなっています。

証明の対象となる法人

無料低額な診療を行う病院事業を行う公益法人における事業年度が証明の対象となります。

証明要件

以下の要件に該当することが必要です。(2は非営利型の一般社団(財団)法人に係る事業年度についてのみ必要です。)

1、事業等要件(法人税法施行規則第6条第4号)

次のいずれかに該当すること。

(イ又はロ又はハに該当)かつ(ニに該当)

又は

(ホに該当)

イ、地域医療支援病院の施設基準に掲げる施設をすべて有していること。

ロ、実地修練又は臨床研修を行う施設を有していること。

ハ、保健師養成所等を有していること又は医師等の再教育を行っていること。
具体的には次のいずれかに該当すること。

1.   保健師、助産師、看護師(准看護師を含む。)、診療放射線技師、歯科衛生士、歯科技工士、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士又は視能訓練士の養成所を有すること。

2.   医学若しくは歯学に関する大学(旧大学令の規定による大学及び旧専門学校令の規定による専門学校を含む。)の教職の経験又は担当診療科に関し5年以上の経験を有する医師又は歯科医師を指導医として、常時3人以上の医師若しくは歯科医師の再教育を行っていること。

(注)再教育を受ける医師若しくは歯科医師に対して報酬を支給しないものに限ります。

ニ、患者の総延べ数の10分の1以上が、生活保護法の医療扶助若しくは出産扶助による診療を受けた者又は無料若しくは診療報酬が10分の1以上減額された者であること。

具体的には、以下の割合が10%以上であること。

※計上する金額について

  1. 生活保護法第15条又は第16条に規定する扶助に係る診療を受けた患者数

  2. 無料又は診療報酬(入院時食事療養費及び入院時生活療養費を含む。)を10%以上減額した患者数

  3. 患者総数

    ※患者数はすべて延べ数

    (注) 当該法人が複数の医療機関を有している場合、有する医療機関すべての合計患者数が基準を満たしていることが必要です。

    ホ、社会福祉法の規定により、同法第2条第3項第9号(無料又は低額な料金による診療事業)に掲げる事業を行う旨の届出をし、かつ、厚生労働大臣の定める基準に従って当該事業を行っていること。

    (注1) 当該事業を行う旨の届出先は都道府県知事です。

    (注2) 当該法人が複数の医療機関を有している場合、医療機関ごとに基準を満たしているかどうか判定し、すべての医療機関が基準を満たすことが必要です。

2、収入要件(法人税法施行規則第6条第7号、平成20年厚生労働省告示第298号)

以下の値が8割を超えること。

※計上する金額について

① 社会保険診療に係る収入金額
(注) 租税特別措置法第26条の第2項に規定する社会保険診療をいいます。

② 労働者災害補償保険法に基づく給付に係る患者の診療報酬
(注) 当該診療報酬が社会保険診療報酬と同一の基準によっている場合又は当該診療報酬が少額(全収入金額のおおむね100分の10以下の場合をいう。)に限ります。

③ 健康増進法第6条各号に掲げる健康増進事業実施者が行う同法第4条に規定する健康増進事業(健康診査に係るものに限る。)に係る収入金額
(注)当該収入金額が社会保険診療報酬と同一の基準により計算されている場合に限ります。

④ 全収入金額

()

·         全収入金額とは、法人の事業収入から、当該法人が開設又は運営する保健師養成所、助産師養成所、看護師養成所又は准看護師養成所に係る事業に係る収入と当該法人の構成員の相互扶助を目的として共済をはかる事業に係るものを除いたもの。

·         事業収入とは、経常的な収益のうち事業活動に係る収益をいい、会費、入会金、特別収入などは含まれない。

 

公益法人等の収益事業

公益法人等(公益社団法人、公益財団法人、一般社団法人(非営利型)、社会福祉法人、学校法人、宗教法人、労働組合、特定非営利活動法人(NPO法人)など)は、課税対象とならない事業と課税対象となる事業が混在します。

法人税法では、課税対象となる事業を収益事業(特掲事業)とし、「販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるもの」(法法2一三)と規定しています。

「販売業、製造業その他の政令で定める事業」とは、

(1)物品販売業 (2)不動産販売業 (3)金銭貸付業 (4)物品貸付業 (5)不動産貸付業 (6)製造業 (7)通信業 (8)運送業 (9)倉庫業 (10)請負業 (11)印刷業 (12)出版業 (13)写真業 (14)席貸業 (15)旅館業 (16)料理飲食業 (17)周旋業 (18)代理業 (19)仲立業 (20)問屋業 (21)鉱業 (22)土石採取業 (23)浴場業 (24)理容業 (25)美容業 (26)興行業 (27)遊技所業 (28)遊覧所業 (29)医療保健業 (30)技芸・学力教授業 (31)駐車場業 (32)信用保証業 (33)無体財産権の提供業 (34)労働者派遣業

とされます。(法令5一~三十四)

 

次の事業は上記の収益事業に含まれません。(法令5②)

1)公益法人又は公益財団法人が行う収益事業のうち認定法に定める公益目的事業

2)収益事業のうち、その事業に従事する次に掲げる者がその事業に従事する者の総数の半数以上を占め、かつ、その事業がこれらの者の生活の保護に寄与しているもの

①身体障害者福祉法に規定する身体障害者

②生活保護法の規定により生活扶助受ける者

③児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センターまたは精神保健指定医により知的障害者として判定された者

④精神保健及び精神障害福祉に関する法律の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者

⑤年齢65歳以上の者

⑥母子及び父子並びに寡婦福祉法に規定する配偶者のない女子であって現に児童を扶養している者または寡婦

 

(事業場を設けて行われるもの) 法基通15-1-4

常時店舗、事務所等事業活動の拠点となる一定の場所を設けてその事業を行うもののほか、必要に応じて随時その事業活動のための場所を設け、又は既存の施設を利用してその事業活動を行うものが含まれる。したがって、移動販売、移動演劇興行等のようにその事業活動を行う場所が転々と移動するものであっても、「事業場を設けて行われるもの」に該当する。

 

(継続して行われるもの) 法基通15-1-5

各事業年度の全期間を通じて継続して事業活動を行うもののほか、次のようなものが含まれることに留意する。

(1) 例えば土地の造成及び分譲、全集又は事典の出版等のように、通常一の事業計画に基づく事業の遂行に相当期間を要するもの

(2) 例えば海水浴場における席貸し等又は縁日における物品販売のように、通常相当期間にわたって継続して行われるもの又は定期的に、若しくは不定期に反復して行われるもの

() 公益法人等が特掲事業とこれに類似する事業で特掲事業に該当しないものとを行っている場合には、その行う特掲事業が継続して行われているかどうかは、これらの事業が全体として継続して行われているかどうかを勘案して判定する。

 

(補助金等の収入) 法基通15-2-12

収益事業を行う公益法人等又は人格のない社団等が国、地方公共団体等から交付を受ける補助金、助成金等(資産の譲渡又は役務の提供の対価としての実質を有するものを除く。以下15212において「補助金等」という。)の額の取扱いについては、次の区分に応じ、それぞれ次による。

(1) 固定資産の取得又は改良に充てるために交付を受ける補助金等の額は、たとえ当該固定資産が収益事業の用に供されるものである場合であっても、収益事業に係る益金の額に算入しない。

(2) 収益事業に係る収入又は経費を補填するために交付を受ける補助金等の額は、収益事業に係る益金の額に算入する。

() (1)に掲げる補助金等をもって収益事業の用に供する固定資産の取得又は改良をした場合であっても、当該固定資産に係る償却限度額又は譲渡損益等の計算の基礎となる取得価額は、実際の取得価額による。

一般社団法人での理事会の権限、職務

1.理事会の権限、職務
理事会は全理事で構成されます。
理事会の職務については下記の通りです。
理事会設置型一般社団法人の業務執行の決定
理事の職務の執行の監督
代表理事の選定及びその解職
なお、代表理事は、理事の中から選任されなければなりません。
理事会は、重要な業務執行の決定を理事には委任することができません。
(理事会が理事には委任することができない事項)
重要な財産の処分及び譲り受け
多額の借財
重要な使用人の選任及び解任
従たる事務所その他の重要な組織の運営
理事の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他一般社団法人の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
役員等の損害賠償責任の免除

2.理事会の決議要件
理事会の決議は、原則として、議決に加わることができる理事の過半数が出席して、その出席した理事の過半数をもって行います。なお、これを上回る割合を定款で定めることもできます。
ただし、社員総会とは異なり、理事会の決議については、特別利害関係者である理事は議決に加わることができません。

一般社団法人での社員総会の権限、決議

1.社員総会の権限
社員総会は、一般社団法人の「社員」で構成され、一般社団法人の重要事項等を決定する機関です。
社員総会の権限については、理事会を設置しているか、設置していないかによって異なります。
○理事会を設置していない一般社団法人の場合
一般社団法人法に規定されている事項
一般社団法人の組織、運営管理その他一般社団法人に関する一切の事項
これらの事項について決議する権限を有します。一般社団法人の運営や組織など、ほぼすべての事項を社員総会で決めていくことになります。
○理事会を設置している一般社団法人の場合
一般社団法人法に規定する事項
定款で定めた事項
上記に関する事項のみ、決議する権限を有します。理事会を設置している一般社団法人の業務の執行の決定は理事会に委ねられています。
○社員総会では、理事会を設置しているか否かに関わらず、社員に剰余金を分配する旨の決議をすることはできません。また、一般社団法人法の規定により、社員総会の決議を必要とする事項について、理事、または理事会等の機関が決定する旨の定款の定めは、その効力を有しません。
2.社員総会の決議
(1)議決権
社員総会においては、社員が行使できる議決権は、1人につき1個です。なお、定款において、これと違う定めを置くことは可能ですが、社員総会において、決議する事項の全部につき社員が議決権を行使できない旨の定款の定めは効力を有しません。
(2)決議の要件
○普通決議
社員総会の決議は、総社員の議決権の過半数を有する社員が出席し、出席した社員の議決権の過半数をもって行います。なお、定款の定めによって、これと異なる定めを置くこともできます。
総会提出資料調査者、業務等調査者の選任
理事・監事の選任
理事の任期短縮
理事の報酬額またはその定款規定
監事の報酬額またはその定款規定
会計監査人の出席を求める決議
責任免除理事への退職慰労金等支給の承認
計算書類の承認
基金の返還
清算人の選任
定款規定が無い場合の残余財産の帰属
○特別決議
下記に該当する議案については、 総社員の半数以上の出席、出席した社員の議決権の3分の2以上に当たる多数を持って行わなければなりません。なお、定款の定めによって、これを上回る定めを置くこともできます。
社員の除名
理事・監事・会計監査人の解任
理事、監事、会計監査人の責任の一部免除
定款の変更
事業の全部の譲渡
解散
継続
合併契約書の承認
○理事会を設置している一般社団法人は、原則として、あらかじめ招集通知に記載された目的事項以外の事項の決議をすることができません。


企業実務オンライン
Pagetop