資産税(不動産・株式等の譲渡所得、相続税・贈与税)

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成年年齢の18歳引下げにともなう贈与税・相続税の改正

民法の改正により、2022年4月1日から、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられた。これにともない、贈与税・相続税の規定における20歳を基準とする要件についても18歳に引き下げる税制改正が行われている。

年齢要件が、その年1月1日において「18歳以上」
「相続時精算課税」(相続税法21の9)
「住宅取得等資金の非課税等」(租税特別措置法70の2、70の3等)
「贈与税の特例税率」(租税特別措置法70の2の5)
「相続時精算課税適用者の特例」(租税特別措置法70の2の6~70の2の8)
「事業承継税制」(租税特別措置法70の6の8、70の7、70の7の5)

年齢要件が、資金管理契約締結の日において「18歳以上」
「結婚・子育て資金の非課税」(租税特別措置法70の2の3)

年齢要件が、相続・遺贈の日において「18歳未満」
「未成年者控除」(相続税法19の3)

(⺠法の改正 成年年齢引下げ に伴う贈与税・相続税の改正のあらまし)


(暦年贈与の適用例示)
質問
私は、祖父から2022年2月に現金800万円を、同年6月に現金700万円の贈与を受けた。同年9月に私は19歳になるが、適用される贈与税率はどのようになるか
回答
あなたの年齢はその年の1月1日において18歳となる。したがって、2月に受けた贈与については、一般税率の適用となるが、6月に受けた贈与については、他の要件を満たせば、特例税率を適用することができる

(相続時精算課税の適用例示)
質問
私は、2022年3月に父から現金500万円の贈与を受けた。同年10月に私は19歳になるが、この贈与について相続時精算課税の適用を受けられるか
回答
贈与の日は2022年3月31日以前であるところ、あなたの年齢は18歳となるため、相続時精算課税の適用は受けられない。したがって、暦年課税により贈与税額を計算して申告することになる

生命保険の名義変更

保険契約者は、名義の変更、保険内容の変更、保険の解約といった権利と、保険料を支払う義務があります。
名義を変更した際、保険料の支払が終了している場合は、新契約者の保険料の負担はありません。保険料支払が終了していなければ、新契約者が保険料の支払を継続します。

名義を変更した際、生命保険会社から旧契約者へ返戻金はなく、新契約者はすでに旧契約者により支払われてきた保険料を含めて保険契約をそのまま受継ぐこととなります。旧契約者が保険料を支払っており、名義変更の後、新契約者がその保険を解約し解約返戻金を受け取ることとなった場合、契約者名義の変更は旧契約者から新契約者への贈与、相続、遺贈となります。

名義の変更は贈与、相続、遺贈となり課税の対象となります。
ただし、契約者の変更時点では課税関係は発生せず変更後にその契約が、
①保険満期を迎える
②契約を解約する
③被保険者が死亡する
など保険契約の消滅時の保険金等の請求権が発生した時点で課税義務が生じます。


(相続税)
契約者の名義変更後で上記①②③などの前に旧契約者が死亡した場合などは、生命保険に関する権利の評価として、旧契約者が死亡した時点での解約返戻金相当額で評価し、その金額で相続税の課税対象となります。(財産評価基本通達214) 

契約者≠被保険者の契約形態で、被保険者より先に契約者が死亡した場合、この保険契約の権利は相続財産となります。旧契約者(保険料を負担した契約者)から新契約者へ名義変更を行い、その後旧契約者が死亡した場合でも、保険料負担者である旧契約者から新契約者に、旧契約者が死亡した時点での解約返戻金相当額が移転したとみなします。(相続税法第三条➀三)

(贈与税)
契約者変更時点では、課税関係は発生致せず、契約を解約するなど保険契約の消滅時に課税が発生します。この保険契約の権利の評価額は課税される時点での解約返戻金額となります。

包括遺贈

包括遺贈は、次の4つに分類できます。

全部包括遺贈

割合的包括遺贈

特定財産を除いた財産についての包括遺贈

清算型包括遺贈

 

全部包括遺贈とは、消極財産も含めて全財産を包括して遺贈することです。例えば、「全財産を○○に遺贈する。」というような遺贈がこれに当たります。

第〇条

遺言者は、遺言者の有するすべての財産を、次の者に遺贈する。

 

遺言太郎(昭和日生、○○○○○○丁目号)

 

割合的包括遺贈とは、全財産の割合的な一部を包括して遺贈することで、一部包括遺贈ともいいます。

遺言者は、遺言者の有するすべての財産について、次の者に、次の割合で遺贈する。

 

遺言太郎(昭和日生、○○○○○○丁目号) 5分の3

遺言二郎(昭和日生、○○○○○○丁目号) 5分の2

 

特定財産を除いた財産についての包括遺贈とは、特定遺贈(対象となる財産を特定して行われる遺贈)と包括遺贈の併存型の遺贈のうち包括遺贈の部分の遺贈のことです。

特定財産を除く遺産についての遺贈が包括遺贈に当たるかどうかについては、法律で規定されておらず、次のように判示されています(東京地裁 平成10626日判決)。

「特定財産を除く相続財産(全部)」という形で範囲を示された財産の遺贈であっても、それが積極、消極財産を包括して承継させる趣旨のものであるときは、相続分に対応すべき割合が明示されていないとしても、包括遺贈に該当するものと解するのが相当である

 

遺言者は、遺言者の有する下記の不動産を長男相続一郎(昭和日生)に相続させる。

 

 

所  在   京都市〇〇区〇町丁目

地  番  

地  目   宅地

地  積   ○○○○

 

所  在   京都市〇〇区〇町丁目

家屋番号  

種  類   居宅

構  造   木造スレート葺2階建

床 面 積   1階 ○○○○

       2階 ○○○○

 

遺言者は、遺言者が有する財産のうち、前条に掲げる不動産を除くすべての財産を、遺言太郎(昭和日生、○○○○○○丁目号)に遺贈する。

清算型包括遺贈

清算型遺贈とは遺産を処分した処分金を受遺者に分配するものをいい、分配する割合を示して行うものを清算型包括遺贈といいます。

 

遺言者は、遺言者の有するすべての財産を換価した上で、葬儀費用、遺言執行費用、売却手数料、不動産登記費用、不動産譲渡所得税等の費用及び負債を控除した残額を遺言太郎(昭和日生、○○○○○○丁目号)遺贈する。

 

法人に対して不動産の遺贈が行われた場合の所得税納税義務の承継

相続が発生し、法人に対し不動産の遺贈が行われた場合、その相続に係る相続人は、被相続人に対するみなし譲渡所得課税(所法59)に係る所得税の納税義務を承継するとともに、所得税の準確定申告及びその納税を行う必要がある(通法5①、所法124①、同125①)。
 民法上、遺贈の形態には包括遺贈と特定遺贈があり、国税通則法及び所得税法において、包括受遺者(法人を含む)については相続人と同様に取り扱う旨を規定しているものの、特定受遺者についてはそのような規定はされていない(通法5①、所法2②)。そのため、被相続人の相続財産の大部分が不動産の場合に、その不動産のすべてを法人に対し遺贈したときは、その遺贈が特定遺贈であるときには、その法人は被相続人に対するみなし譲渡所得課税に係る所得税を負担することはなく、不動産を取得しない相続人が、その所得税を全額負担することになる。

※相続人が被相続人の配偶者、子又は父母の場合は、法人に対して遺留分減殺請求をすることにより財産の取戻し、それを原資として所得税の納税義務を果たすことができるが、相続人が被相続人の兄弟姉妹である場合には遺留分減殺請求権がないことから納税義務のみを承継することとなる。また、相続人が不存在又は相続人全員が相続を放棄をした場合、相続財産法人が成立し(民951)被相続人の納税義務を承継するが、民法上相続財産法人に遺留分減殺請求を認める規定はないため、法人に対し不動産が特定遺贈され、被被相続人に対するみなし譲渡所得課税に係る所得税を納付する原資となる財産がない場合、現実的に課税ができないことにもなる。
 ※国税通則法5条及び所得税法124条の規定において、被相続人に課されるべき国税の納税義務を相続人が承継するものと定められている背景には、相続人はその相続によって被相続人からこれに見合う相当の財産の承継があるということが前提となっている。法人に対し不動産の特定遺贈が行われた場合に、被相続人からの財産の取得がない相続人に対しても、被相続人に係る納税義務を承継させる規定は、相続人と特定受遺者である法人とのみなし譲渡所得課税に係る課税公平が損なわれている。

法人に対し譲渡所得の基因となる資産の遺贈が行われた場合

法人に対し譲渡所得の基因となる資産の遺贈が行われた場合には、時価で譲渡されたものとみなされる(所法59①一)。

 

 所法(譲渡所得)

第三十三条 譲渡所得とは、資産の譲渡(建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるものを含む。以下この条において同じ。)による所得をいう。

 

※所得税法33条に規定する「譲渡」とは、通常、法律行為による所有権の移転と解されているので、相続のように一定の事実(相続)に基づいてその効果(権利、義務の包括的承継)が生ずる場合は「譲渡」に含まれないが、贈与、遺贈による資産の移転は同条に規定する「譲渡」に該当する。(所得税基本通達逐条解説)

 

所法(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)

第五十九条 次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。

一 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)

二 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)

 

所通(同族会社等に対する低額譲渡)

59-3 山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産を法人に対し時価の2分の1以上の対価で譲渡した場合には、法第59条第1項第2号の規定の適用はないが、時価の2分の1以上の対価による法人に対する譲渡であっても、その譲渡が法第157条《同族会社等の行為又は計算の否認》の規定に該当する場合には、同条の規定により、税務署長の認めるところによって、当該資産の時価に相当する金額により山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額を計算することができる。

 

 

個人から個人に対する遺贈において、受遺者には相続税を課税し、遺贈者が遺贈財産取得時期や取得価額を受贈者に引き継がせることにより、遺贈者が所有していた期間に生じた資産の値上がり益を受贈者に引き継がせ、将来、受遺者が受遺財産を譲渡したときに譲渡所得課税を受けることとされている(所法60)。

 

所法(贈与等により取得した資産の取得費等)

第六十条 居住者が次に掲げる事由により取得した前条第一項に規定する資産を譲渡した場合における事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その者が引き続きこれを所有していたものとみなす。

一 贈与、相続(限定承認に係るものを除く。)又は遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く。)

二 前条第二項の規定に該当する譲渡

 

 

個人から法人に対する遺贈において、上記と同様の取り扱いを行うと、本来、所得税が課税されるべき個人が所有していた期間の値上がり益が法人に引き継がれ、所得税が課税されず法人税が課税されることとなる。このため、法人に対する資産の無償譲渡(遺贈、死因贈与、贈与)については、個人から法人に所有権の移転があったときの「時価」で譲渡があったとみなして譲渡所得課税を行い、遺贈者である個人が所有していたときの値上がり益に対し所得税を精算的に課税する。

 

法人に対する遺贈が時価で譲渡したものとみなされることにより、遺贈財産に値上がり益があれば、遺贈者は譲渡所得の申告が必要となる(所法59①一)。遺贈者の死亡により遺言の効果が生ずるのであるから、遺贈者の相続人は相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に準確定申告を行い(所法125)、納税義務を負うこととなる(通法5)。

法人に対する遺贈が特定遺贈の場合、特定遺贈の受遺者は遺贈者の準確定申告に係る申告義務も納税義務も負わないが、包括遺贈の場合、包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するので、包括受遺者である法人も準確定申告を行い、納税義務を負うこととなる。

 

相続人や包括受遺者が複数の場合は、それぞれの者が承継する所得税額は、民法900条から902条までの規定(法定相続分・代襲相続人の相続分・遺言による相続分の指定)による相続分によりあん分して計算した額によるものとされる。

相続人や包括受遺者の内に、その相続によって取得した財産の額がその負担すべき所得税額を超える者がいるときは、その相続人や包括受遺者は、その相続によって取得した財産の額を限度として他の相続人の納付義務を負うものとされる(通法5②③)。

遺贈者の準確定申告と納税義務は相続人及と包括受遺者が承継する。土地や株式など値上がり益のある資産を法人に対し特定遺贈する場合には、相続人の申告・納付義務を考慮する必要が生ずる。

 

所法(年の中途で死亡した場合の確定申告)

第百二十五条 居住者が年の中途において死亡した場合において、その者のその年分の所得税について第百二十条第一項(確定所得申告)の規定による申告書を提出しなければならない場合に該当するときは、その相続人は、第三項の規定による申告書を提出する場合を除き、政令で定めるところにより、その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から四月を経過した日の前日(同日前に当該相続人が出国をする場合には、その出国の時。以下この条において同じ。)までに、税務署長に対し、当該所得税について第百二十条第一項各号に掲げる事項その他の事項を記載した申告書を提出しなければならない。

 

国通(相続による国税の納付義務の承継)

第五条 相続(包括遺贈を含む。以下同じ。)があつた場合には、相続人(包括受遺者を含む。以下同じ。)又は民法(明治二十九年法律第八十九号)第九百五十一条(相続財産法人の成立)の法人は、その被相続人(包括遺贈者を含む。以下同じ。)に課されるべき、又はその被相続人が納付し、若しくは徴収されるべき国税(その滞納処分費を含む。次章、第三章第一節(国税の納付)、第六章(附帯税)、第七章第一節(国税の更正、決定等の期間制限)、第七章の二(国税の調査)及び第十一章(犯則事件の調査及び処分)を除き、以下同じ。)を納める義務を承継する。この場合において、相続人が限定承認をしたときは、その相続人は、相続によつて得た財産の限度においてのみその国税を納付する責めに任ずる。

2 前項前段の場合において、相続人が二人以上あるときは、各相続人が同項前段の規定により承継する国税の額は、同項の国税の額を民法第九百条から第九百二条まで(法定相続分・代襲相続人の相続分・遺言による相続分の指定)の規定によるその相続分によりあん分して計算した額とする。

3 前項の場合において、相続人のうちに相続によつて得た財産の価額が同項の規定により計算した国税の額を超える者があるときは、その相続人は、その超える価額を限度として、他の相続人が前二項の規定により承継する国税を納付する責めに任ずる。

 

 

〇時価5,000万円の土地を法人に特定遺贈した場合の譲渡所得税の計算

(取得費:収入金額の5%とする)

5,000万円 - 5,000万円 X 5% × 15.315% ≒ 727万円

 

〇住民税の課税時期である翌年の11日には納税義務者である被相続人は存在しないので住民税(5%)は課税されない。

 

 

準確定申告における譲渡所得税相当額を相続人に相続させる場合は、その譲渡所得税相当額の金額は相続財産として相続税が課税される。法人に特定遺贈する場合は、その譲渡所得の税金相当額を受遺者である法人に負担させるよう負担付遺贈を行うことも検討される。

ただし、公益法人等その他公益を目的とする事業を行う法人に対して土地や株式などを遺贈する場合において、譲渡所得税相当額の金額を負担する内容の負担付遺贈としたときは、公益法人等に対して財産を寄付した場合の譲渡所得の非課税(措法40)は適用されない。公益法人等に対して財産を寄付した場合の譲渡所得の非課税(措法40)は、法人に対する贈与又は遺贈に関する所得税法591項1号の適用に係る規定なので、負担という実質的な対価を伴う資産の移転について所得税法5911号は適用されず、租税特別措置法40条の規定の適用の余地はなくなる。

 

措法(国等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税)

第四十条 国又は地方公共団体に対し財産の贈与又は遺贈があつた場合には、所得税法第五十九条第一項第一号の規定の適用については、当該財産の贈与又は遺贈がなかつたものとみなす。公益社団法人、公益財団法人、特定一般法人(法人税法別表第二に掲げる一般社団法人及び一般財団法人で、同法第二条第九号の二イに掲げるものをいう。)その他の公益を目的とする事業(以下この項から第三項まで及び第五項において「公益目的事業」という。)を行う法人(外国法人に該当するものを除く。以下この条において「公益法人等」という。)に対する財産(国外にある土地その他の政令で定めるものを除く。以下この条において同じ。)の贈与又は遺贈(当該公益法人等を設立するためにする財産の提供を含む。以下この条において同じ。)で、当該贈与又は遺贈が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与すること、当該贈与又は遺贈に係る財産(当該財産につき第三十三条第一項に規定する収用等があつたことその他の政令で定める理由により当該財産の譲渡をした場合において、当該譲渡による収入金額の全部に相当する金額をもつて取得した当該財産に代わるべき資産として政令で定めるものを取得したときは、当該資産(次項、第三項及び第十六項において「代替資産」という。))が、当該贈与又は遺贈があつた日から二年を経過する日までの期間(当該期間内に当該公益法人等の当該公益目的事業の用に直接供することが困難である場合として政令で定める事情があるときは、政令で定める期間。次項において同じ。)内に、当該公益法人等の当該公益目的事業の用に直接供され、又は供される見込みであることその他の政令で定める要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたものについても、また同様とする。

被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(措置法35条③)

国税庁HP NO.3306 3307

1 制度の概要

 相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます。
 これを、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例といいます。

2 特例の対象となる「被相続人居住用家屋」及び「被相続人居住用家屋の敷地等」

(1) 特例の対象となる「被相続人居住用家屋」とは、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で、次の3つの要件全てに当てはまるもの(主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物に限ります。)をいいます。
イ 昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
ロ 区分所有建物登記がされている建物でないこと。
ハ 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。

 なお、要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所するなど、特定の事由により相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった場合で、一定の要件を満たすときは、その居住の用に供されなくなる直前まで被相続人の居住の用に供されていた家屋(以下「従前居住用家屋」といいます。)は被相続人居住用家屋に該当します。


 ※ 被相続人居住用家屋が従前居住用家屋である場合の要件
 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例では、相続の開始
 の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった家屋であっても、次の(1)か
 ら(3)の要件を満たすときは、その居住の用に供されなくなる直前まで被相続人の居住
 の用に供されていた家屋は、被相続人居住用家屋として特例の対象になります。

 (1) 次に掲げる事由(以下「特定事由」といいます。)により、相続の開始の直前に
 おいて被相続人の居住の用に供されていなかった場合であること。
   イ 介護保険法第19条第1項に規定する要介護認定若しくは同条第2項に規定す
    る要支援認定を受けていた被相続人又は介護保険法施行規則第140条の62の4
    第2号に該当していた被相続人が次に掲げる住居又は施設に入居又は入所をし
    ていたこと。
     (イ)老人福祉法第5条の2第6項に規定する認知症対応型老人共同生活援
        助事業が行われる住居、同法第20条の4に規定する養護老人ホーム、
        同法第20条の5に規定する特別養護老人ホーム、同法第20条の6に規
        定する軽費老人ホーム又は同法第29条第1項に規定する有料老人ホー
        ム
     (ロ)介護保険法第8条第28項に規定する介護老人保健施設又は同条第29項
        に規定する介護医療院
     (ハ)高齢者の居住の安定確保に関する法律第5条第1項に規定するサービ
        ス付き高齢者向け住宅((イ)の有料老人ホームを除きます。)
   ロ 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第21条第1項
    に規定する障害支援区分の認定を受けていた被相続人が同法第5条第11項に規
    定する障害者支援施設(同条第10項に規定する施設入所支援が行われるものに
    限ります。)又は同条第17項に規定する共同生活援助を行う住居に入所又は入
    居をしていたこと。

    (注)被相続人が、上記イの要介護認定若しくは要支援認定又は上記ロの障害
      支援区分の認定を受けていたかどうかは、特定事由により被相続人居住用
      家屋が被相続人の居住の用に供されなくなる直前において、被相続人がそ
      の認定を受けていたかにより判定します。


 (2) 次に掲げる要件を満たしていること。
   イ 特定事由によりその家屋が被相続人の居住の用に供されなくなった時から相
    続の開始の直前まで、引き続きその家屋がその被相続人の物品の保管その他の
    用に供されていたこと。
   ロ 特定事由によりその家屋が被相続人の居住の用に供されなくなった時から相
    続の開始の直前までその家屋が事業の用、貸付けの用又は被相続人以外の者の
    居住の用に供されていたことがないこと。
   ハ 被相続人が上記(1)イ又はロの住居又は施設(以下「老人ホーム等」といいま
    す。)に入所をした時から相続の開始の直前までの間において、被相続人が主
    としてその居住の用に供していたと認められる家屋がその老人ホーム等である
    こと。
 (3) その家屋が次の3つの要件全てに当てはまるもの(特定事由によりその家屋が被
  相続人の居住の用に供されなくなる直前において、主として被相続人の居住の用に
  供されていた一の建築物に限ります。)であること。
   イ 昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
   ロ 区分所有建物登記がされている建物でないこと。
   ハ 特定事由により被相続人の居住の用に供されなくなる直前において被相続人
    以外に居住をしていた人がいなかったこと。


(2) 特例の対象となる「被相続人居住用家屋の敷地等」とは、相続の開始の直前(従前居住用家屋の敷地の場合は、被相続人の居住の用に供されなくなる直前)において被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地又はその土地の上に存する権利をいいます。
 なお、相続の開始の直前(従前居住用家屋の敷地の場合は、被相続人の居住の用に供されなくなる直前)においてその土地が用途上不可分の関係にある2以上の建築物(母屋と離れなど)のある一団の土地であった場合には、その土地のうち、その土地の面積にその2以上の建築物の床面積の合計のうちに一の建築物である被相続人居住用家屋(母屋)の床面積の占める割合を乗じて計算した面積に係る土地の部分に限ります。

【事例】被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の範囲

【事例】被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の範囲



3 特例を受けるための適用要件

(1) 売った人が、相続又は遺贈により被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等を取得したこと。

(2) 次のイ又はロの売却をしたこと。
イ 相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。
 (注)被相続人居住用家屋は次の2つの要件に、被相続人居住用家屋の敷地等は次の
   (イ)の要件に当てはまることが必要です。
   (イ) 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供され
      ていたことがないこと。
   (ロ) 譲渡の時において一定の耐震基準を満たすものであること。
ロ 相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をした後に被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。
 (注)被相続人居住用家屋は次の(イ)の要件に、被相続人居住用家屋の敷地等は次
   の(ロ)及び(ハ)の要件に当てはまることが必要です。
   (イ) 相続の時から取壊し等の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供
      されていたことがないこと。
   (ロ) 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供され
      ていたことがないこと。
   (ハ) 取壊し等の時から譲渡の時まで建物又は構築物の敷地の用に供されてい
      たことがないこと。

(3) 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。

(4) 売却代金が1億円以下であること。
 この特例の適用を受ける被相続人居住用家屋と一体として利用していた部分を別途分割して売却している場合や他の相続人が売却している場合における1億円以下であるかどうかの判定は、相続の時からこの特例の適用を受けて被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を売却した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に分割して売却した部分や他の相続人が売却した部分も含めた売却代金により行います。
 このため、相続の時から被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を売却した年までの売却代金の合計額が1億円以下であることから、この特例の適用を受けていた場合であっても、被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を売却した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までにこの特例の適用を受けた被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等の残りの部分を自分や他の相続人が売却して売却代金の合計額が1億円を超えたときには、その売却の日から4ヶ月以内に修正申告書の提出と納税が必要となります。
1億円の判定における合算対象の範囲図
(5) 売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
(6) 同一の被相続人から相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等について、この特例の適用を受けていないこと。
(7) 親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと。
 特別の関係には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。

4 適用を受けるための手続

  この特例の適用を受けるためには、次に掲げる場合の区分に応じて、それぞれ次に掲げる書類を添えて確定申告をすることが必要です。

(1) 相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売った場合
イ 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)〔土地・建物用〕
ロ 売った資産の登記事項証明書等で次の3つの事項を明らかにするもの
  (イ) 売った人が被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等を被相続
     人から相続又は遺贈により取得したこと。
  (ロ) 被相続人居住用家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
  (ハ) 被相続人居住用家屋が区分所有建物登記がされている建物でないこと。
ハ 売った資産の所在地を管轄する市区町村長から交付を受けた「被相続人居住用家屋 等確認書」

 (注)ここでいう「被相続人居住用家屋等確認書」とは、市区町村長の次の6つの事項
  (被相続人居住用家屋が従前居住用家屋以外の場合は、(イ)及び(ロ)に掲げる
   事項)を確認した旨を記載した書類をいいます。
   (イ) 相続の開始の直前(従前居住用家屋の場合は、被相続人の居住の用に供
      されなくなる直前)において、被相続人が被相続人居住用家屋を居住の用
      に供しており、かつ、被相続人居住用家屋に被相続人以外に居住をしてい
      た人がいなかったこと。
   (ロ) 被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の
      敷地等が相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に
      供されていたことがないこと。
   (ハ) 被相続人居住用家屋が、被相続人が要介護認定等を受けて老人ホーム等
      に入所するなど、特定の事由により相続の開始の直前において被相続人の
      居住の用に供されていなかったこと。
   (ニ) 被相続人居住用家屋が被相続人の居住の用に供されなくなった時から相
      続の開始の直前まで引き続き被相続人の物品の保管その他の用に供されて
      いたこと。
   (ホ) 被相続人居住用家屋が被相続人の居住の用に供されなくなった時から相
      続の開始の直前まで事業の用、貸付けの用又は被相続人以外の者の居住の
      用に供されていたことがないこと。
   (ヘ) 被相続人が老人ホーム等に入所した時から相続の開始の直前までの間に
      おいて被相続人の居住の用に供する家屋が2以上ある場合には、これらの
      家屋のうちその老人ホーム等が、被相続人が主として居住の用に供してい
      た一の家屋であること。
ニ 耐震基準適合証明書又は建設住宅性能評価書の写し
ホ 売買契約書の写しなどで売却代金が1億円以下であることを明らかにするもの


(2) 相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をした後に被相続人居住用家屋の敷地等を売った場合
イ 上記(1)のイ、ロ及びホに掲げる書類
ロ 売った資産の所在地を管轄する市区町村長から交付を受けた「被相続人居住用家屋等確認書」
 (注)ここでいう「被相続人居住用家屋等確認書」とは、市区町村長の次の4つの事項
   (被相続人居住用家屋が従前居住用家屋以外の場合は、(イ)から(ハ)に掲げる事
    項)を確認した旨を記載した書類をいいます。
    (イ) 上記(1)のハの(イ)の事項。
    (ロ) 被相続人居住用家屋が相続の時から取壊し等の時まで事業の用、貸付
       けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。
    (ハ) 被相続人居住用家屋の敷地等が次の2つの要件を満たすこと。
        A 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に
         供されていたことがないこと。
        B 取壊し等の時から譲渡の時まで建物又は構築物の敷地の用に供さ
         れていたことがないこと。
    (ニ) 上記(1)のハの(ハ)から(ヘ)の事項。

(居住用財産の3000万円特別控除)共有の家屋とともにその単独所有の敷地を譲渡した場

Aが所有する敷地の上に、AとBが共有(それぞれの持分は1/2ずつ)の家屋があり、その家屋にはAとその家族が居住し、Bはその家屋以外の家屋に居住しています。
AとBがその家屋とその敷地を譲渡した場合、AとBの「3,000万円特別控除(措法35条)」に係る適用関係はどのようになるのでしょうか?

Aの所有する土地は、Aがその全部を居住の用に供している家屋の敷地であるから、その土地の全部がAの居住用家屋の敷地であるといえます。Aの所有する家屋(持分1/2)及び土地の全部について「3,000万円特別控除」の特例の適用があります。

Bについては、Bが居住の用に供している家屋の譲渡ではないため、「特例」の適用を受けることができません。

自筆証書遺言の保管制度、保管申請に係る手数料など各手続にかかる費用が明らかに

平成30年に改正相続法(民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律)と同時に成立した「法務局における遺言書の保管等に関する法律」は、法務省における自筆証書遺言の保管制度について規定したもので、本年、令和2年7月10日がその施行日(制度開始日)とされている。

この保管制度は、公正証書遺言に比べ手軽に作成できる一方、形式上の不備や内容の信頼性など問題の起こりやすい「自筆証書遺言」について、一定の様式による自筆証書遺言を法務局に保管することにより、紛失・亡失、相続人による廃棄・隠匿・改ざんなどにより相続をめぐる紛争の防止や相続手続を円滑に進めることができるなどの目的により創設される。
※家庭裁判所の検認手続も不要。
保管の申請は、遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局。

遺言者の手続
相続人等の手続
自筆証書遺言書の様式について

この保管制度を利用する際に必要となる各手数料が明らかとなった。(3月23日付「法務局における遺言書の保管等に関する法律関係手数料令」公布)



〇遺言書の保管の申請をする場合には、1件につき3,900円
〇保管された遺言書の原本を閲覧するには1回につき1,700円
〇遺言書の撤回及び変更の届出については、手数料は不要とされている。
※これら手続を行う際は事前に予約が必要。

自筆証書遺言書保管制度の手数料一覧・遺言書保管所一覧・遺言書保管所管轄一覧
※遺言書情報証明書:遺言者の相続人、受遺者等が、遺言者の亡後に交付を受けられる遺言書の写し
※遺言書保管事実証明書特定の死亡している者について、自己(請求者)が相続人、受遺者等となっている遺言書(関係遺言書)が遺言書保管所に保管されているかどうかを証明した書面

(参考)公正証書遺言の作成に係る手数料は次のとおり。
公正証書遺言の作成費用(日本公証人連合会)

遺言書方式の選択にあたっては、保管制度の利用の有無、費用も含めた判断が必要です。



特定一般社団法人等に対する相続税の課税


特定一般社団法人等の役員(理事に限る。以下同じ。)である者(相続開始前5年以内のいずれかの時において特定一般社団法人等の役員であった者を含む。)が死亡した場合には、当該特定一般社団法人等が、次の計算式で計算した金額に相当する金額を当該被相続人から遺贈により取得したものとみなして、当該特定一般社団法人等に相続税が課税されます。


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この場合において、特定一般社団法人等に相続税が課税される場合には、その相続税の額から、贈与等により取得した財産について既に当該特定一般社団法人等に課税された贈与税等の額を控除します。

 

※「特定一般社団法人等」とは、次に掲げる要件のいずれかを満たす一般社団法人等をいいます。
① 相続開始の直前における同族役員数の総役員数に占める割合が2分の1を超えること。
② 相続開始前5年以内において、同族役員数の総役員数に占める割合が2分の1を超える期間の合計が3年以上であること。


※「同族役員」とは、一般社団法人等の理事のうち、被相続人、その配偶者又は3親等内の親族その他当該被相続人と特殊の関係がある者(被相続人が会社役員となっている会社の従業員等)をいいます。

 
上記の改正は、平成30(2018年) 年4月1日以後の一般社団法人等の役員の死亡に係る相続税について適用されます。ただし、同日前に設立された一般社団法人等については、令和3 年(2021年)4月1日以後の当該一般社団法人等の役員の死亡に係る相続税について適用されます。

一般社団法人への財産の移転

1.一般社団法人へ移転する財産に係る譲渡所得税

個人の資産を一般社団法人へ移転させようとする場合、資産を移転する際の課税が生じる場合があります。
個人が、一般社団法人へ資産を寄附や贈与(遺贈)した場合、その資産の時価をもって譲渡があったものとされます。無償ではなく、著しく低い価額によって譲渡した場合も同様です。したがって、資産の時価を譲渡収入とみなし、利益が発生すれば譲渡所得が発生します。
一般社団法人に対して、財産1億円を寄附する場合、現金1億円であれば課税は生じません。しかし、有価証券や不動産の場合、売却益によって譲渡所得が発生することがあります。その場合、所得税が課税されることになります(所得税法59条)。

2.財産を取得する一般社団法人の法人税

一般社団法人が、個人から資産の寄附・贈与(遺贈)を受けた場合、受贈益が益金算入されて法人税等が課税されます(法人税法22条等)。

3.一般社団法人による租税回避防止のための課税

一般社団法人への贈与や遺贈によって、贈与者等の親族の贈与税又は相続税が不当に減少すると認められる場合には、法人を個人とみなして贈与税又は相続税が課されます(相続税法66条4項)。
この場合、すでに法人税等を支払っていますから、そこに贈与税又は相続税が課されますと、二重課税となります。そのため、すでに支払った法人税等は、支払うべき贈与税又は相続税から控除するものとされています。

※次のいずれか一つにでもあてはまると、個人から一般社団法人に対して財産が低額で譲渡されるなどして、相続税や贈与税が不当に減少する結果になる場合には、受け取った側の一般社団法人を個人とみなして、当該財産については相続税または贈与税が課税されます。

〇定款や規則で、当該一般社団法人の役員等に占める親族等の割合が三分の一以下である旨の記載がない場合
〇当該法人に財産を贈与したり遺贈した人、または当該者の親族に対して特別な利益を与える場合
〇当該一般社団法人が解散した場合に、残余財産が国や地方自治体等に帰属することになる定めが定款等にない場合
〇当該法人について、仮装や隠ぺいなどの事実がある場合

この規定は2018年4月1日以降の財産移転に係る相続税、または贈与税について適用されます。

 

第1次相続に係る相続税の債務控除、相次相続控除

債務控除は、被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)とされている(相法13①一)。この公租公課には、被相続人の死亡の際納税義務が確定しているもののほか、被相続人の死亡後相続税の納税義務者が納付することとなった税額(被相続人が相続により取得した財産に対する相続税額)が該当する(相令3①二)。
第2次相続に係る相続人が第1次相続に係る相続人に課される第1次相続に係る相続税額を承継することとなるため、第1次相続に係る相続税額は第2次相続に係る課税価格の計算上、債務控除の対象となる。 
第1次相続に係る相続人が、その死亡前に第1次相続に係る相続税額を納付していたなら、その相続税相当額だけ遺産総額が減少していることとなることを考慮すると、第1次相続に係る相続人が納付しないで死亡した場合には、第2次相続の債務控除の対象となる。

短期間のうちに次の相続が行われた場合には、長期間相続が行われなかった場合に比べて、相続税の負担に著しい不均衡が生じるおそれがあるため、相続税の負担調整の観点から相次相続控除の規定により、10年間に2回以上相続が開始した場合には、前回の相続(第1次相続)の際に課された相続税額のうち一定の部分の金額を、次の相続(第2次相続)に係る相続税額から控除することとしている。
相次相続控除は、第1次相続と第2次相続とで重複して相続税の課税対象となる財産がある場合、第1次相続に係る相続税額を、税額控除として第2次相続の際に調整するものであり、第1次相続に係る相続税額の債務控除とは、関連しない。

配偶者居住権等消滅の場合の譲渡所得の取得費

2018年の民法改正で創設され本年4月1日から施行される配偶者居住権は、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物の無償使用を、終身又は一定期間、配偶者に認める権利。
2019年度の税制改正において、配偶者居住権の相続税の評価方法が定められ、国税庁の相続税法基本通達改正において、配偶者居住権が消滅した場合の贈与税の取扱いが示されていた。

2020年度税制改正においては、配偶者居住権及び配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の用に供されている土地等を配偶者居住権に基づき使用する権利(「配偶者敷地利用権」)が消滅等した場合及び配偶者居住権の目的となっている建物又はその建物の敷地の用に供されている土地等(「居住建物等」)をその所有者が譲渡した場合における譲渡所得に係る取得費の取扱いが規定される。

配偶者居住権が消滅する場合としては、配偶者の死亡のほか、配偶者と配偶者居住権の目的となっている建物の所有者との間での合意や、配偶者が配偶者居住権を放棄する場合などがある。
配偶者居住権は民法上、譲渡することはできないが、合意や放棄により利益を受ける居住建物の所有者から対価の支払いがある場合も出てくる。2020年度改正では、このような場合には譲渡所得として課税されるものとして、その取得費の取扱いが規定される。
配偶者居住権等(配偶者居住権又は配偶者敷地利用権)の消滅により支払いを受けた金額から控除する取得費は、居住建物等の被相続人に係る「居住建物等の取得費」に「配偶者居住権等割合」を乗じた金額から、配偶者居住権の設定から消滅等までの期間に係る「減価の額」を控除した金額とする。
※配偶者居住権等割合とは、その配偶者居住権設定時における「配偶者居住権又は配偶者敷地利用権の価額/居住建物等の価額」
居住建物等を取得した相続人が、配偶者居住権又は配偶者敷地利用権の消滅前に居住建物等を譲渡した場合の取得費は、居住建物等の取得費から配偶者居住権等の取得費を控除した金額とする。

また、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例等については、居住建物等が収用等をされた場合において、配偶者居住権等が消滅等をし、一定の補償金を取得するときは、その適用ができることとする。

特別寄与料制度の税務上の取扱い

2019年7月1日より施行された民法の相続法改正における特別寄与料制度により、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族が、相続の開始後、相続人に対し、その寄与に応じた額の金銭を請求できる。

これまでも民法には、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした場合、その寄与分を相続分に加えることができるという寄与分制度があった。しかし、寄与分は相続人が対象となるため、たとえば被相続人の子の配偶者などの相続人以外の者が被相続人の療養看護に努め、被相続人の財産の維持に貢献した場合であっても、寄与分を請求できなかった。
このような相続人以外の人の貢献を考慮するための方策として特別寄与料制度が創設された。特別寄与料を請求できる特別寄与者になる資格を有するのは被相続人の親族であり、相続人、相続放棄者、欠格又は廃除により相続権を失った者は対象とならない。親族の範囲は、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族となる。

特別寄与料の税務上の取扱いは、被相続人から遺贈により取得したものとみなして相続税が課せられる。一方、特別寄与料を支払う相続人は、その相続人が相続又は遺贈により取得した財産から特別寄与料を控除することができる。
相続人ではない特別寄与者は原則として相続税額の2割加算の適用対象となる。
特別寄与者が被相続人から相続開始前3年以内に贈与を受けた財産があるときは、相続税の計算上、相続税の課税価格にその贈与財産の加算とその贈与財産について納付した贈与税額の控除の適用がある。
特別寄与料は原則として金銭による支払とされているが、相続人が特別寄与料を金銭での支払に代えて不動産や有価証券などの資産を移転した場合、その相続人が代物弁済したものとして取り扱われる。代物弁済は税務上、その代物弁済により移転する不動産や有価証券等の資産を、その代物弁済により消滅する債務の額で譲渡したものとして取り扱われるので、相続税のほか、譲渡所得に対する課税も考慮する必要がある。

借地権の取引慣行がある地域・ない地域

法人が土地を借り建物を建てた際、
①権利金を支払わない
②相当地代の支払いをしない
③無償返還の届出を出さない
この全てにおいて該当する場合には、借地権の認定課税が行われます。ただし認定課税が行われるのは、使用の対価として通常権利金その他の一時金を収受する取引上の慣行がある場合に限られます。

 

この取引上の慣行があるかどうかについては、財産評価基本通達27以下のように規定されています。 

 借地権の価額は、その借地権の目的となっている宅地の自用地としての価額に、当該価額に対する借地権の売買実例価額、精通者意見価格、地代の額等を基として評定した借地権の価額の割合(以下「借地権割合」という。)がおおむね同一と認められる地域ごとに国税局長の定める割合を乗じて計算した金額によって評価する。ただし、借地権の設定に際しその設定の対価として通常権利金その他の一時金を支払うなど借地権の取引慣行があると認められる地域以外の地域にある借地権の価額は評価しない。 

 

このように、借地権の価額の割合は国税局長が定めています。そして国税局長の定める割合がない地域が借地権の取引慣行がない地域だとされます。
 国税局長が定める借地権の割合は、路線価図及び倍率表に記載されています。路線価図の場合、路線価の数字の後に続くAGの記号が借地権割合です。また倍率表では、借地権割合の欄が「-」となっていれば借地権割合がありません。

では、この借地権の取引慣行の有無を納税者が覆すことは可能なのでしょうか。いずれも相続、贈与の裁決事例ですが、借地権の取引慣行の有無を争った案件は全て納税者側の主張が退けられています。

   実際地価の安い地域では、借地権の設定に際して権利金の授受が行われないことも多いですが、税務当局の主張を覆すことは難しいようです。

法定相続情報証明制度

平成29年5月29日から,全国の登記所(法務局)において,各種相続手続に利用することができる「法定相続情報証明制度」が始まりました。現在,相続手続では,お亡くなりになられた方の戸除籍謄本等の束を,相続手続を取り扱う各種窓口に何度も出し直す必要があります。
法定相続情報証明制度は,登記所(法務局)に戸除籍謄本等の束を提出し,併せて相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を出していただければ,登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付します。
その後の相続手続は,法定相続情報一覧図の写しを利用いただくことで,戸除籍謄本等の束を何度も出し直す必要がなくなります。

 

具体的な手続き

 

1.事前に確認すること

 

(1)本制度を利用することができる方(申出人となることができる方)は,被相続人(お亡くなりになられた方)の相続人(又はその相続人)です。民法(明治29年法律第89号)における相続人の範囲は,こちら(よくあるご質問)を参考にしてください。また,本制度の申出は,申出人からの委任によって,代理人に依頼することができます。委任による代理人については,親族のほか,弁護士,司法書士,土地家屋調査士,税理士,社会保険労務士,弁理士,海事代理士及び行政書士に依頼することができます。
(2)被相続人や相続人が日本国籍を有しないなど,戸除籍謄抄本を提出することができない場合は,本制度を利用することができません。

 

2.必要書類の収集

手続に当たって,用意していただく必要のある書類は,以下を参照してください。

http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001224878.pdf

なお,必ず用意する書類のうち,被相続人の出生から亡くなるまでの戸除籍謄本については,こちら(よくあるご質問)を参考にしてください。

 

3.法定相続情報一覧図の作成

被相続人(亡くなられた方)及び戸籍の記載から判明する相続人を一覧にした図を作成します。

法定相続情報一覧図の様式・記載例

http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000015.html

 

4.申出書に必要事項を記入、登記所への申出

申出書に必要事項を記入し,2.必要書類の収集で用意した書類,3.法定相続情報一覧図の作成で作成した法定相続情報一覧図と合わせて申出をします。
申出をする登記所は,以下の地を管轄する登記所のいずれかを選択することが可能です。
(1)被相続人の本籍地(死亡時の本籍を指します。)
(2)被相続人の最後の住所地
(3)申出人の住所地
(4)被相続人名義の不動産の所在地
なお,申出や一覧図の写しの交付(戸除籍謄抄本の返却を含む)は,登記所にお越しいただくほか,郵送によることも可能です。郵送による一覧図の写しの交付(戸除籍謄抄本の返却)を希望する場合は,その旨を申出書に記入した上,返信用の封筒及び郵便切手を同封してください。窓口で受取をする場合は,受取人の確認のため,「申出人の表示」欄に押印した印鑑を持参してください。

申出書様式

http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001224881.docx

記載例

http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001229280.pdf

 

留意事項

・法定相続情報証明制度において交付する一覧図の写しは,相続手続にのみご利用いただけます。
・法定相続情報証明制度は,戸除籍謄本等の記載に基づく法定相続人を明らかにするものです。そのため,相続放棄や遺産分割協議の結果によって,実際には相続人とならない方(相続分を有しない方)がいる場合も,法定相続情報一覧図にはその方の氏名等が記載されます。
・法定相続情報証明制度をご利用いただくためには,必要書類を不足なく揃えていただき,法定相続情報一覧図を誤りなく作成いただく必要があります。登記官からこれらの不備について直していただくよう求めたにもかかわらず,必要な書類や正しい法定相続情報一覧図が提出されない場合は,お預かりしていた書類一切を申出人に返戻します(郵送による場合,郵送料は申出人のご負担となります。)。返戻に応じていただけない場合は,申出日から3か月経過した後,お預かりしていた書類一切を廃棄します。

 

法務局法務ページ http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000014.html より

相続税の更正の請求

1.国税通則法の原則
①相続税の申告書を提出した人が、その申告書に記載した課税価格や税額等の計算について、相続税法等の規定に従っていなかったこと又は計算に誤りがあったことにより、相続税を納めすぎたときは、法定申告期限から5年以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税価格又は相続税額等につき
更正をすべき旨の請求ができます。(通則法23①)。
②更正の請求をする場合には、 その請求に係る更正前の課税価格又は税額等、 更正後の課税価格又は税額等、その更正の請求をする理由、その請求をするに至った事情の詳細その他参考となるべき事項を記載した更正請求書を、更正の請求の理由の基礎となる「事実を証明する書類」を添付して、税務署長に提出しなければなりません(通則法23③、通則令6②)。

 2.国税通則法の特則
次の事由に該当する場合、その事由が生じた日の翌日から起算して2ヶ月以内に限り、税務署長に対し更正をすべき旨の請求ができます(通則法23②、通則令6①)。
①課税価格又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解等を含む)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき。
②申告等をした者に帰属するものとされていた財産等が他の者に帰属するものとする当該他の者に係る国税の更正又は決定があったとき。
③その申告、更正又は決定に係る課税価格又は税額等の計算の基礎となった事実に係る国税庁長官が発した通達に示されている法令の解釈その他の国税庁長官の法令の解釈が、更正又は決定に係る審査請求若しくは訴えについての裁決若しくは判決に伴って変更され、変更後の解釈が国税庁長官により公表されたことにより当該課税価格又は税額等が異なることとなる取扱いを受けることとなることを知ったこと。

 3.相続税法の特則
相続税の申告書を提出した者又は決定を受けた者が、例えば次のいずれかに該当する事由により、その課税価格や相続税額が過大となったときは、その事由が生じたことを知った日の翌日から4ヶ月以内に限り、税務署長に対し更正の請求ができます(相法32、相令8①②)。
①未分割財産につき民法に規定する相続分又は包括遺贈の割合に従って課税価格が計算されていた場合に、その後当該財産の分割が行われ、共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が、当該相続分又は包括遺贈の割合に従って計算された課税価格と異なることとなったこと。
②民法に規定する認知、相続人の廃除又はその取消しに関する裁判の確定、相続の回復、相続の放棄の取消しその他の事由により相続人に異動を生じたこと。
③遺留分減殺請求に基づき返還すべき又は弁償すべき額が確定したこと。
④遺贈に係る遺言書が発見され、又は遺贈の放棄があったこと。
⑤相続若しくは遺贈又は贈与により取得した財産についての権利の帰属に関する訴えについての判決があったこと、その他一定の事由が生じたこと。
⑥相続税の期限内申告書の提出期限において未分割であった財産が分割されたことにより、その分割に基づき配偶者の税額軽減の規定を適用して計算した相続税額が、その時前において同項の規定を適用して計算した相続税額と異なることとなったこと(①に該当する場合を除く)。

Q1(相) 父が亡くなったのですが相続税はどうなるのでしょうか

   亡くなった方(以下「被相続人」)の持っておられた財産の価額(相続時の時価)から、借入金などの債務や葬式費用を差し引いた金額が「基礎控除額」以下であれば相続税の申告の必要はありません。ただし、今後のことを考え、遺産分割の協議はしておいた方がいいでしょう。

    「基礎控除額」は、「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」となっています。即ち配偶者と子供二人の場合は、5,000万円+1,000万円×3人=8,000万円までは相続税がかからず申告の必要はありません。
    なお、法定相続人とは民法上の相続権を有している相続人を言いますが、養子縁組などをしている場合には別途規定があります。
 

     また、相続税の配偶者の税額軽減や居住用宅地などの小規模宅地等の減額などの特例計算を受ける場合には、相続税がかからない場合であっても申告の必要があります。

    そのほか、生前贈与があった場合、農地等がある場合など、一般的でない場合は専門家にお問い合わせください。

 

  基礎控除額は平成25年度の税制改正において縮減される可能性があります。

Q2(相) 相続財産の価額はどのように計算するのですか

  亡くなった日における時価で計算することになっています。ただし、一般的には「財産評価基本通達」に基づいて計算するため、土地に関しては「路線価」や「固定資産税評価額×一定率」(地域によっていずれを採用するかは異なります)を基本に「時価評価」を行うことになります。土地の形状や貸借関係などにより細かな計算方法が定められており相続税がかかる場合には不利にならないように慎重な対応が必要になります。 


   また、株式なども上場企業と非上場の会社、持ち株の割合などによって計算方法が異なります。いずれにしてもこのような場合は専門家にご相談された方がよいと思われます。

Q3(相) 財産から差し引けるものにはどのようなものがありますか

   被相続人の債務が対象になります。借金や未払金などですが、借金がない場合であっても「固定資産税や住民税」「病院の支払」などはよく見る事例です。

   また、お葬式の費用は本来の「債務」とは異なるのですが、必然的に発生するため控除の対象になっています。ただし、あくまで相続人が故人のために支出する費用なので「お通夜・葬儀」に関連するもの以外(初七日や四十九日など)は控除の対象にはなりません。

Q4(相) 相続の放棄とはどういったものですか

相続は被相続人の全ての財産・債務を引き継ぐことになりますが、被相続人が多額の借金を抱えている場合などは、残された人の生活に重大な影響を及ぼすことになります。そのような場合にはすべての権利・義務を「放棄」することができます。勿論、一方的あるいは合意によって相続権を放棄することも可能です。  

また、相続財産の実態が不明な場合には「限定承認」と言って、財産がプラスの場合に限り相続する手続きもあります。

いずれにしても、これらは法的な手続きが必要ですので弁護士等にご相談されることをお勧めします。

Q5(相) 相続税の申告はいつまでにしなければなりませんか

相続税の申告期限は「相続の開始を知った日から10ケ月以内」となっています。通常は亡くなった日から10カ月以内と言うことになります。申告が必要な場合には遺産分割協議書を始め多くの書類を整える必要がありますので、あらかじめ日程に余裕を持つことが大切です。
 

また、それまでに遺産分割の協議が整わなかった場合であっても「未分割」の申告が必要です。未分割の場合、相続税の軽減を受ける特例が分割されるまで受けられないことが多いので、多額の納税額が発生することを念頭に置く必要があります。(分割後、更正の請求等によって返済されます)

Q6(相) 相続時精算課税制度とはどのようなものですか

通常、親が子に対し贈与をした場合には贈与税がかかります。しかしその贈与税の課税を先延ばしして、親が亡くなった時点で相続財産に含めて相続税として課税しようという制度です。(但し、現行2,500万円まで)
 

親があらかじめ、特定の推定相続人に対し生前贈与により財産を渡しておきたい場合や、住宅取得資金を援助したい場合などに有効ですが、相続時にはその財産を贈与した時点での時価により計算することになるので注意が必要です。
 

    又この制度は非常に政策的なものであるため、適用年度や贈与の内容によって年齢制限や適用対象者、贈与税の特別控除額に差異が生じます。この制度の利用をお考えの方は、あらかじめご相談されることをお勧めします。

Q7(贈) どのような時に贈与税がかかるのでしょうか

原則として、個人間で金銭の贈与をしたり、資産を無償あるいは時価より低い価額で取引した場合に、受け取った側(受贈者)の利益が基礎控除額(年110万円)を超えた場合に贈与税がかかります。通常は親族間の場合が多いのですが、取引先であったり親しい人との間でも起こりえます。なお、贈与税は年単位で計算し受贈者にかかります。その受贈者が年に2人以上から贈与を受けた場合(例えば父と母からそれぞれ)にはその合計額から基礎控除額を引き計算しますので注意して下さい。

また、公益法人などを利用した租税回避を防ぐため、一定の場合にはこれらの法人に対してもかかる場合があります。

Q8(贈) 贈与税がかからない場合ってどんな時ですか

贈与税にも非課税規定があります。一般的には、扶養義務者からの生活費や教育費としての贈与(仕送りなど)です。勿論、際限があり「通常必要と認められるもの」の範囲内となります。そのほか、社交上必要な香典、お祝い、お見舞いなども社会通念上の相当額であれば非課税とされます。その他公益性の高い場合などがありますが詳しくはお問い合わせください。なお、法人から贈与を受けた場合は所得税が課されますので、贈与税は非課税とされます。

特別な場合としては、婚姻期間が20年以上の配偶者への居住用不動産の贈与等については2000万円まで(贈与税の配偶者控除)、直系尊属からの住宅取得のための資金の贈与についても一定額まで(贈与の年度によって異なります。平成24年であれば一般住宅が1000万円、省エネ等住宅の場合は1500万円)が非課税となります。これらは贈与税がかからない場合であっても確定申告が必要で、他にも条件がありますのでご確認ください。

Q9(贈) 子供に生前贈与をしても税金がかからない制度があるって聞いたのですが

2の「住宅取得等資金の贈与」でなければ、相続時精算課税制度と言う制度のことだと思われます。概要は相続税のQ&Aで触れていますので、そちらをお読みください。実際に利用しようとお考えの場合は、適用要件や適用年度などにより異なる場合がありますので、事前に税務署又は税理士にご相談された方が無難です。

Q10(贈) 贈与税の申告はいつまでですか。税金はその時までですか

贈与を受けた年の翌年3月15日までです。申告書の受付けは2月1日から始まりますので、お早めに申告された方がいいでしょう。納税は原則として申告期限までに納付する必要がありますが、金額が大きくなる場合などは最長5年間にわたり「延納」することができます。ただし、結構な利率の延納金利が課されますのでご確認のほどを。


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